· 

森の巨人「上倉山のクロベ」からの贈り物

 日本全国にある巨樹・巨木から選ばれた「森の巨人100選」というものをご存知でしょうか?これは林野庁が2000年に次世代へ健全な形で残すべき、巨樹巨木を中心とした森林生態系の中から代表的なものとして選定したものです。朝日連峰では上倉山(かみくらやま)の山頂近くにある「クロベ」(別名ネズコ:ヒノキ科)が選ばれています。

 この辺り一帯は朝日山地森林生態系保護地域に指定されています。周辺には他にもいくつかのクロベの巨木が見つかっており、またそれらを囲むブナの森はブナの巨木で構成されていて見事です。夏場は登山道以外を歩くのはなかなか大変ですが、春先の雪が残る時期には自由に歩くことができ、上倉山の先の御影森山(みかげもりやま)までの間は素晴らしいブナの巨木の森を堪能できます。きっとどこかにブナの森の主たる巨樹があるに違いありません。いつか探せたらと思っています。

▲今年4月に御影森山で見たブナの巨木
▲今年4月に御影森山で見たブナの巨木
▲そこら中太いブナだらけ。
▲そこら中太いブナだらけ。

▲手前のクロベ。十分迫力あります。
▲手前のクロベ。十分迫力あります。

 さて、上倉山のクロベは登山道から250mほど下ったところにあります。その50mほど手前にも大きなクロベがあります。先週、この木を見るために泊まりに来たお客さんから、「手前のクロベまでは歩きやすく、すぐ行けるが、奥の一番のクロベまでは、笹が背丈よりも大きくて、道もわかりにくく、手前のクロベも大きいから、教えてもらっていないとそれで満足して戻ってしまうよ。」と言われていました。

 

 確かに正確な情報を得ずに行った人が、手前のクロベで満足して帰ってくることがこれまでも何度もありました。本物には根元に看板が置いてあるのですが、そういう人に話を聞くと大抵「看板などなかった」と言います。そういえば数年前、地元の子どもたちをクロベに連れていく前に下草を刈って以来、手入れをしていなかったと思い、手入れに行くことにしました。

 

 登山道を歩き、上倉山山頂を過ぎて5分ほどでクロベへの道との分岐になります。小さな看板を置いていますが、朝日鉱泉側から来た人が見る方向にしかつけていないため、反対側大朝日岳、御影森山方向から来た人用の看板もつけました。そしてクロベへの道へ入ると、確かに手前のクロベの木までは道もしっかり分かり、下草もさほど生い茂ってはおらず、容易にたどりつきました。しかし、このクロベの横を通り、さらに50mほど下るのですが、とたんに笹が生い茂り、道も非常にわかりずらくなっています。これではこの木が一番大きなクロベだと思って戻ってしまう人がほとんどかもしれません。逆に言えば、この状態がその証拠なのだと思いました。

 それからは黙々と一番のクロベまでの道を覆う笹を刈っていきました。ただ、いかんせんこちらの武器は手鋸とナタ。ナタでは笹はなかなか切れませんので、手鋸がメインとなり、まぁその大変なこと!なかなか前に進みません。お昼には終わるかと思っていましたが、半分も終わらずお昼をすぎてしまいました。

 

 せっかくなので、クロベを見ながらお昼にしようと笹をかき分け会いに行くと…いました! 悠然と、そしてどっしりと他を圧倒するような風格で、何かそこだけ時が止まったかのようです。何百年も前から、ずっとそこにいたのです。

▲圧倒的な存在感
▲圧倒的な存在感
▲いったいどれだけの年月を過ごしてきたのだろう…
▲いったいどれだけの年月を過ごしてきたのだろう…

 しばしクロベを独り占めしながらお昼をとりました。おにぎりで肉体的なパワーを、クロベから精神的なパワーを補給し、俄然力がみなぎってきたので、このパワーで午後からもせっせと作業をしましたが、結局午前中から3時間かけて、登山道から一番のクロベまでのアプローチの整備を完了しました。

 

 完了後は少しの間、クロベとの時間を愉しませてもらい、疲れた体と心が癒されました。

 雨も降っていたため、名残惜しかったですが、早々にクロベを後にし下山を開始しました。梅雨とは名ばかりだった朝日の森に恵みの雨が滲み込んでいました。

 上倉山山頂を過ぎ、朝日鉱泉までの急な下りを10分くらい下りたあたりでしょうか。ふと、道の木の根の上に、ヤマドリの美しい尾羽根が落ちています!しかも長さは70cmと立派(帰って調べてみると成鳥に2枚しかない一番長い尾羽根のようでした)で、山の中でこんな大きくて綺麗な羽根は初めてみました。


 行きには確かにありませんでした。「これは上倉山のクロベがお礼にくれたのかな?」と思い、なんともうれしい気持ちになりました。リュックに入れると折れたり崩れたりしそうだったので、手に握って、早る気持ちを抑え転ばぬよう慎重に帰り、子どもたちに見せてあげました。

 

 森の巨人「上倉山のクロベ」、会うためにはひと山登る必要があり大変ですが、車で横づけして見られる巨木よりも、よっぽど自然で価値があり、苦労して行った先で見る姿には、きっと誰もが感激するでしょう。一見の価値、あります。

コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    donvino (金曜日, 06 7月 2018 04:50)

    今週登ります。刈り払いありがとうございます。いつも、山道を管理されている方々に感謝しております。

  • #2

    今野 昇 (金曜日, 27 7月 2018 11:01)

    昨日7/26日にクロベを見てきました。圧倒的な存在感に身震いする感じがしました。幹から出ている枝の力強さにものすごい生命力を感じました。
    案内もピンクテープや看板があり見逃しはなかったです。大朝日岳からの帰り道でしたが長丁場の登山道がきれいに刈り払いされ整備されているのには感激しました。ブナの巨木が林立する御影森山コースは素晴らしい山旅になったと大満足です。
    ありがとうございました。

  • #3

    管理者 (土曜日, 28 7月 2018 06:36)

    コメントありがとうございます!
    上倉山の大クロベは間違いなく一見の価値のある巨木だと自負しております。クロベに辿り着くまでにはそれなりの道のりですが、ぜひたくさんの方に出会っていただきたいと思っています!