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この時期いつもの登山道整備

毎年、深い雪に半年ほど覆われる朝日連峰。そのため、登山道も雪崩や倒木などが多く、毎年整備をする必要があります。毎年のことですので、いつも雪崩がついて壊れてしまう箇所や崩れてしまう場所はわかっていますが、その程度は行ってみないことにはわかりません。特に中ツルルートは前半の2合目出合までは渓谷沿いをへつるように登山道が切ってありますので、何か所も雪崩がつき、毎年それなりの修復が必要です。

 今年は春の連休に一番手を入れなければならない「上のゴガ沢」の所へ下見に行きました。するといつも以上に大きな雪崩がついたらしく、まだ大きな雪渓が残っていて、その雪崩によって登山道が10mほど持っていかれてしまっていました。「これはなかなかだな…」と思い、現地を少し見て帰ってきました。

 小屋開けや連休のお客さんが帰り、ひと段落したので、好天を見計らって、道具を持って登山口から順々に整備を進めていくことにしました。せっかくの外作業ですし、どうせ行くなら天気の良い日に限ります。

1日目は朝から晴天で本当に気持ちのよい日で、新緑でやわらかい緑のこの時期は、ただ歩いているだけで幸せを感じます。少し歩いては「あぁ、きれいだなぁ。」とつい立ち止まって周りを見渡してしまいます。とはいえ、あまりノロノロしていると作業が進みませんので、気を引き締めて整備が必要な箇所へ進みます。初日は沢3か所の整備を終え、登山口から2kmほど進むことができました。

 2日目は、毎年一番手のかかる例の「上のゴガ沢」です。この日も朝から快晴で、気持ちの良い山歩きを楽しみながら現地へ到着。手前から順々に整備を始めます。ここは毎年雪崩によって、打ちつけていた鉄杭や土のう、土留めの丸太などがすべて谷へ落されてしまい、まずはそれを谷から担ぎ上げなければなりません。それがなかなかの重労働でした。そこで初めての試みとして、昨年秋の山閉まいの際に可能な範囲で、鉄杭や丸太、土のうなどを雪崩のつかない場所へ外して避難させてみたところ、当然すべて残っているので、すぐに作業に入れるではないでしょうか!なぜこれを前からしていなかったのか…。

 一つ大きな作業が減ったことで、気分もあがりさっそく作業開始です。一番役に立つのは鍬で、無くなりかけている登山道の山側を削り整地。

▲秋に退避させておいた丸太や鉄杭、土のう
▲秋に退避させておいた丸太や鉄杭、土のう
▲整備の相棒、剣スコ、大ハンマー、鍬
▲整備の相棒、剣スコ、大ハンマー、鍬

▲①作業前、ほとんど道がない…
▲①作業前、ほとんど道がない…
▲②谷側へ鉄杭を打ちつけて道幅をとる
▲②谷側へ鉄杭を打ちつけて道幅をとる

▲③丸太を置き土留めとする
▲③丸太を置き土留めとする
▲④土を敷いて整地。
▲④土を敷いて整地。

▲土のうを置いてグッと安定する
▲土のうを置いてグッと安定する

 岩などで削れず、歩く幅が十分にとれないところは大ハンマーを使って谷側に杭を打ち、木や枝で土留めを作り、そこに土を敷きます。それでも不安定な場合には、剣スコップで土を削り土のう袋に詰めて土のう作り、要所要所に置くとグッと安定感と安心感が出ます。傾斜のないところはそうやってスイスイ進みます。

 傾斜のあるところはそうはいかず、無理のない段差を土を削って作り、十分なステップができない場合には、杭と土留めを置き場所を確保し、土のうを置いて安定させて、上り下りできるようにします。

▲登山道がわからない状態。降りて真ん中奥へ進まなけれななりません。
▲登山道がわからない状態。降りて真ん中奥へ進まなけれななりません。
▲鉄杭が少ないのでブナの倒木で現地調達
▲鉄杭が少ないのでブナの倒木で現地調達
▲土のうを段差に配置し、歩きやすくする
▲土のうを段差に配置し、歩きやすくする
▲ちょっと目を離した間にラブレター?「オトシブミ」のネーミングの素晴らしさよ。
▲ちょっと目を離した間にラブレター?「オトシブミ」のネーミングの素晴らしさよ。

 ここまででお昼となり、いったん昼食休憩。朝作ってきた塩おにぎりと卵焼き、ウインナー、たくあん。すべて味付け濃いめで、汗だくの体が喜びます。水はもちろんすぐそばの沢の水。シンプルイズベスト!あっという間にたいらげました。

寝転んで、真上に広がるブナの葉の間から差し込む木漏れ日に目を細め、沢に吹き込む風を感じながら午後の作業を考えていると、沢のせせらぎ、ブナの葉のそよぐ音、シジュウカラの声に眠気を誘われて、まぶたがゆっくり閉じて…。

 しっかり1時間の昼食休憩をとり、すっきりと元気みなぎり、午後の作業開始です。

 午後はまだ残雪が残っている雪崩斜面。残雪が本来の登山道ギリギリまで残っているので、残雪の上に乗って作業ができるので、かえって作業ははかどります。ただ、この残雪が無くなると沢まで落ちてしまう場所なので、裸地になった状態を想像しながら、杭と丸太と土のうで登山道をつくります。最後に沢に下りる所に土のうを積み、ようやく完成!

▲残雪を少し堀り作業ができたので少し楽
▲残雪を少し堀り作業ができたので少し楽
▲作業前、沢から見た全景
▲作業前、沢から見た全景
▲残雪の上部に登山道を復活
▲残雪の上部に登山道を復活
▲作業後の全景 30mほどの沢への道が完成
▲作業後の全景 30mほどの沢への道が完成

 時刻は午後3時。予定していた作業時間でなんとか一番手のかかる場所の整備が終了出来ました。天気も良く、暑すぎずブヨも少なかったため、作業にはベストの気候ということもあったと思います。まだこの先も何か所も整備する必要がある箇所がありますので、あと何日かは必要ですが、5月中には中ツルルートの整備を終わらせたいと思っています。

 登山道は人の手が入らないとあっという間に荒廃してしまいます。そして、たくさんの人に歩いてもらうことで、道が踏み固まり、安定します。中ツルルートは距離は短いものの、直登でなかなかハードなルートですが、できる限り整備はしたいと思いますので、チャレンジできる方はぜひ使ってみてください。

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コメント: 3
  • #1

    鈴木康平 (日曜日, 21 5月 2023 09:09)

    登山道整備本当にありがとうございます。お陰様で登山も釣りも快適に出来ます。感謝しております。

  • #2

    粕谷幸夫5月23日 (火曜日, 23 5月 2023 09:46)

    登山道の整備お疲れ様です。今年も6月7,8日と連保区の予定をしています。予約を入れようとしましたが整備で携帯に出られなかったのですね。今年も岩魚釣り楽しみにしています。

  • #3

    井阪 了 (日曜日, 28 5月 2023 19:54)

    5月18日
    頭殿山と出合まで往復のベースとして一泊お世話になりました。その4日前、これ程大変な整備をして下さっていたとは知らず、頭が下がります!おかげで快適な山歩きを楽しめました。
    夕食、朝食でいただいた多種多様な山菜のおいしかったこと。初めて食べるものがほとんどでしたが、天婦羅、お浸し、どれも最高でした! またこの季節に伺いたいと思いました。