· 

”秘境””清流”朝日川だからこそ?毎年来る常連さんの「シノリガモ」夫婦

▲婚姻色のオス(出典:ズカンドットコム)
▲婚姻色のオス(出典:ズカンドットコム)

「シノリガモ」ってご存知ですか?普段は地味な色をしているようですが、オスの婚姻色は白斑模様が入り、近くで見ると結構きれいです。

海岸などの海辺に現れる「海カモ」らしく、詳しく調べてみると大半は遠くシベリアなどで繁殖しているらしいです。

 

 

▲川底の石と被ってわかりづらいですが、夫婦仲良く楽しそう
▲川底の石と被ってわかりづらいですが、夫婦仲良く楽しそう

 実は、朝日鉱泉から歩いてすぐの吊り橋がある堰堤に、毎年この時期、必ずやってきます。しかも結構な期間留まります。そしていつも夫婦?なのです。

 父曰く30年くらい前から来ているとのこと。珍しいらしいよとは言われましたが、気になって調べてみると、日本で繁殖しているのは北日本のごく一部の渓流の上流のみらしく、ここでも繁殖しているとなれば、本当に珍しく貴重かもしれないということがわかってきました。

 

ここ2週間は、吊り橋を渡っていると結構な頻度で夫婦で仲良く泳いでいるのを見かけます。しかも毎年必ず2羽の夫婦(つがい)で…。30年以上生きることはたぶん無いと思うので、これって、もしかしたら代々この家族のみに受け継がれているのではないのか?と推測してしまいます。

 ただ、いつも見かけるときは、浅瀬の川底と被って見ずらいところで、

←写真を撮ってもわかりずらく(中央にいて岩に向かってつがいで泳いでいます)、私を警戒してなのか、吊り橋の下の深みには来てくれません。

 

 そんなもどかしい思いをしていた数日前、吊り橋を渡っていて、ふと下を見ると下の深みの川底で、真っ黒い大きな物体がすごいスピードで動いています。

ものすごく大きく見え、一瞬「何がいるんだ?」とギョッとしました。ただ、こういう時に限ってカメラもスマホも持ていません…。魚にしたら50cm以上はあるし、幅が異常に太いので、大きな亀(ウミガメのような感じ)がすごいスピードで動いているような気がして、「こんなとこに亀がいるのか!すごい発見だ!」と思っていました。

 

というか、それぐらいしか想像できませんでした。実際、私が吊り橋を渡ってくる前から川底にいたでしょうから、30秒以上は川底を動き回っていたと思います。なので、水生の生き物としか思いつきませんでした。

 

すると次の瞬間、フワッと浮き上がってきて、それがシノリガモの雄であったことを認識し、「そういえばお前たちがいたな!」と、ものすごく安心してしまいました。

 

人間は自分の常識を超え、理解不能なことに遭遇すると、脳が不安や恐怖を感じ、知っている事象に無理やり当てはめようと働き、それで勝手に安心感を得ようとするものだ聞いたことがありますが、まさにそうなんだなとつくづく思いました。

 

少し考えてみれば、朝日川にウミガメがいるわけは無いし、亀があんなスピードで泳ぐわけないことはわかるのですが、突然目の前で起きた出来事にパニックになっていたんでしょう…。

 

彼はエサであるイワナをとるために、あんなにも長時間潜り、川底を探していたのでしょう。

 

あんな長時間潜るなんてすごい能力だなと感心しました。

…が、

彼が浮き上がり、別の場所へ移動した後、

彼が潜っていた場所でイワナが悠々と泳いでいるのが見えました…。

魚を捕る能力ははたして……。

 

ともあれ、自由に繁殖場所を探し選ぶことのできる野鳥の彼ら(一族?)が、30年ほど前(もしかしたらそれ以上)に、何かのきっかけで、朝日連峰の朝日川のこの場所を、一時的とはいえ、安住の地として認識し、今なお、その子孫?が伴侶をつれて来てくれるとは、自然環境の変化に敏感な野生生物にお墨付き(お住みつき)をいただいたようで、なんだかとても誇らしく、うれしくなりました。

 

この先10年後、20年後も、「常宿」として、どうかお使い下さいな。