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今年の夏山を想う

「6月でこの暑さは信じられない…」6月後半からの異常な暑さに、訪れた皆さんに何度この言葉を言ったでしょうか。雪が多く、春先の寒さもあり、雪解けの遅い6月を迎えましたが、後半に入り一転、全国的にそうですが、6月とは思えない暑さです。初めは雪解けが進み、危険な雪渓が無くなったり、雪に埋もれていた水場が早く出るようになるから、暖かくなるのは良いなぁと思っていましたがとんでもない、この時期からこんな異常な暑さが続いては、様々な自然のバランスや生態系にも影響を与えてしまいそうです。本来7月中旬位まで鳴くエゾハルゼミも、暑すぎて日中は鳴かなくなり、5~6月前半に多いブヨなどの小虫が、稜線上などで大発生しています。この時期羽化し、小虫を食べてくれるトンボがこの暑さで大丈夫なのかも心配です。本来は7月はまだ朝晩など涼しいので、朝日鉱泉周辺などで過ごし、8月に入り夏本番になると涼しい山腹や山頂部などへ移動していくのですが…。

 現状、ものすごいスピードで雪が融け、例年より多いと思われていた残雪も、今では例年並みの残り方になってきています。遅れていた水場も出始め、遅い年には8月まで埋もれている大朝日岳山頂近くの水場「金玉水(きんぎょくすい)」も、7月中に出るのではないかと思っています。逆にこうなってくると心配なのが、空梅雨、猛暑による夏以降の「水不足・水場の枯れ」です。

数日前、登山者からの情報により、直登コースの中ツル4合目の水場「長命水」が出ているということで、水場整備と壊れていた4合目の看板を設置に行きました。前日宿泊の登山者の出発を待っての出発で、朝6:30頃に出発しましたが、すでにその時間で、外は少しムワッとするような暖かさ、湿度も高く、先が思いやられました。沢沿いは川風もあり、ひんやりして気持ちが良いですが、日向に出ると日差しが暑く、2合目から3合目の急登は非常にキツかった…。暑さと湿度に汗が止めどなく流れすぐ水が欲しくなります。出発時間の遅さに後悔しました。日帰りはもちろん、泊りでの登山でも早朝の涼しい時間の出発は必須です。3合目の看板の文字が消えかかっていたので、持って行ったペンキで書き直し、4合目には新しく作った4合目看板を設置しました。

 4合目長命水はこの看板の右から下りていきますが、結構な急傾斜をロープを頼りながら、150mほど降りて行った先にあります。道の整備と追加でロープを設置してきました。数年前ブナの巨木の倒木が道の途中にあり、少し行きづらいですが、情報通り水は出ていました。しかし…、出始めたばかりでこの水量は少ない!もともと秋には枯れてしまう水場ですが、それでも、この水量は少ないです。この先しばらくは出ていると思いますが、このまま空梅雨で雨が少ないと早々に枯れてしまいそうです。いつまで出ているか保証はできません。緊急時の水場としての認識が良いと思います。水自体は冷たくて美味しいです。

▲ロープを頼りに降りていく
▲ロープを頼りに降りていく
▲水量は少ないですが出てはいる
▲水量は少ないですが出てはいる

 この長命水に限らず、雪解け水が源泉となっている山頂部周辺の水場は、雪解けが終わってくると、梅雨の雨が少なければ、枯れてくるということが今後は考えられます。またもし、7月後半からの夏本番が、今と同等、もしくは一層暑くなるようなことがあると、登山リスクが非常に高くなってしまいます。朝日鉱泉も日よけをしたりしていますが、午後は西日も当たり、部屋も暑くなりご迷惑をおかけするようになってきています。こんなことは6,7年前はありませんでした。とにかく数年前までとは暑さが違い、こんな東北の山奥でも危険を感じる暑さになっていることは間違いありません。

 今後の7月後半~8月の夏本番を迎えるにあたって、その時期に山に登ることをお考えの皆さんへの注意点を挙げてみました。

①日中(午前9時前~午後4時頃)の暑さが非常に厳しいので、日帰り、宿泊を問わず、早朝(8月の日の出は5時頃)出発をする。

②確実な給水可能ポイントで普段の1.5~2倍の給水をする

③ポータブル扇風機や冷却材などの暑さ対策グッツを用意する

④沢や川の近くでは(駐車場や中ツルコース前半)、暑くなる(7月後半~8月中下旬)と出てくる、刺されると痛い小型のアブ(イヨシロオビアブ)が大量に出てくるので、対策(肌の露出を避ける、防虫ネット(沢・川沿いでは雨具を着るなど)、ハッカ油(虫よけスプレーはほとんど効きません。まだハッカスプレーの方が効く。万全ではありません)などを用意)をしっかりする。駐車場では車の排気ガスに寄ってくるので、駐車後速やかにエンジンを切り、しばらく車内で待つなどする。

⑤絶対に無理をしない、引き返す勇気を持つ(山は逃げません)

 

実際にこの夏がどうなるかは分かりませんが、皆さん感じているように、6月からこの暑さですので、容易に夏が想像できるのではないかと思います。

 

以前までの「東北の山は梅雨明け以降、8月が夏山本番」というイメージは、もはや過去のものです。全国的に真夏の野外活動は避けましょうと推奨されています。「山だから涼しい、東北だから涼しい」は通用しません。できうるならば、真夏の登山は避けた方が良いと思います。どうしてもこの時期に登りたいのであれば、「山はいつでも自己責任」を念頭に、万全の対策、覚悟、経験、体力を持って来てください。朝日鉱泉は営業しています。出来得る限りのサポートはさせていただきます。